今回は2000年後期のGIレース勝ち馬の中島理論的回顧をしてみようと思います。その1回目はスプリンターズS、秋華賞、菊花賞、天皇賞・秋の4レースの勝ち馬たちです。<2000年12月12日初出、2001年1月7日改>
日本のTourbillon系の主な分枝は、パーソロンを主流とするMy Babu系とダンディルートを主流とするClarion系の2系に分かれます。ダイタクヤマトは、そのうちの後者であるダンディルートの0遺伝を受けたビゼンニシキを直祖父に持つ希少価値のサラブレッドです。自身はGI勝ちのならなかったビゼンニシキでしたが、直仔ダイタクヘリオスを通じて直孫の代までGIホースを輩出しました。皇帝生涯ただ1頭のライバルが、孫の代になって、やっと一矢報いるかたちで、先にGIホースを輩出しました。ダイタクヤマトの誕生日がシンボリルドルフの誕生日と同じ日というのも因縁めいていますね。中島理論とは離れますが、ジワジワと成長するダンディルート系の真骨頂を見た思いでした。
ダイタクヤマトの配合の特徴は、何と言っても「母系の世代進展の遅さ」でしょう。図らずも中島氏が『競馬最強の法則』誌、2000年12月号で述べられています。
カウアイキングは1963年の生まれ。母のSweep Inは1942年の生まれで21年の差がある。その父のBlenheimは1927年、祖母のSweepestaは1925年、その父Sweepは1907年、曾祖母Celestaは1910年、その父Semproniusは1891年の生まれである。カウアイキングと、それぞれの差はBlenheim38年、Sweep57年、Sempronius72年と世代交代の年代差が大きく、当時の産駒の通常ならば5代以上の先祖となるところを、4代以内の先祖に3つも保有している馬はカウアイキングただ一頭であろう。(中略)
老齢繁殖牝馬には、このようなマジックで、闘争本能が強大に変身した生涯最高の産駒を輩出する場合が多い。ボワラッスル(1935年)は、日本ではトサミドリ、トロットサンダーなど老齢繁殖牝馬が輩出した名馬である。
−『競馬最強の法則』誌、2000年12月号、P97より抜粋。−
ダイタクヤマトの各父との生年差は、母父テスコボーイが31年、祖母父クリノハナが45年、曾祖母父ダイオライトが67年となっています。父ダイタクヘリオスが6歳時交配、母ダイタクブレインズが18歳時交配の産駒でした。そして、母が不受胎後の生涯最後の産駒でもありました−ダイタクヤマトは乳母に育てられたそうです−。パターンとしてはトロットサンダーと似通っています。彼はその父ダイナコスモスが5歳時交配、母ラセーヌワンダが不受胎後の19歳時交配の産駒でした。参考までに、ボワラッスル(Bois Roussel)はその母Plucky Liegeが22歳時交配の産駒、トサミドリはその母フリッパンシーが21歳時交配の産駒となります。
ダイタクヤマトの牝系は、ユートピア牧場−あるいは大東牧場−が誇る1号族セレタ系(1929年輸入)。ダイタクヤマトの4代母である英月からの活躍馬は枚挙に暇がありません。英月は繁殖名であり、競走名はテツバンザイといいます。同牝馬は第4回オークスの勝ち馬で、通算36戦7勝。その直仔クリミノルはクモハタ記念など68戦14勝、ダイコロンブスはクモハタ記念など73戦9勝、クリチカラは日本経済賞など重賞5勝を挙げ51戦18勝、クリバンは東京牝馬特別など57戦12勝……。時代が違うとは言え、みんなスゴイですね。ダイタクヤマトの曾祖母であるケンタッキーは通算42戦4勝。その直仔クリペロは天皇賞・春など31戦15勝、クリヒデ(牝)は天皇賞・秋など31戦5勝、クリベイは函館記念など30戦9勝。その分枝は孫、曾孫、玄孫と巨大に広がり、とてもここには書ききれません−ちなみに、中島氏の配合馬であるダイセキテイはケンタッキーの5代孫にあたります−。ケンタッキーが8歳時交配の産駒であるクリスミレの分枝は、東京王冠賞(大井)の勝ち馬グッドボーイや青葉賞の勝ち馬タヤスアゲインがいるくらいでしたが、ダイタクヤマトが見事にGIホースの栄誉を手に入れました。
内国産の血統が、外来血統を打ち負かした第34回スプリンターズSでした。
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
ダイタクヘリオス (Luthier系) |
テスコボーイ (Princely Gift系) |
クリノハナ (Blandford系) |
ダイオライト (Orby系) |
父の活性値 | 母父の活性値 | 祖母父の活性値 | 曾祖母父の活性値 |
1.50 (6歳時交配) |
0.75 (11歳時交配) |
1.50 (6歳時交配) |
0.75 (19歳時交配) |
父の分枝状況 | 母父の分枝状況 | 祖母父の分枝状況 | 曾祖母父の分枝状況 |
Tourbillon〜Herod系 | Bend Orの9代孫 | Birdcatcherの9代孫 | Bend Orの6代孫 |
8代残牡先祖数 | マジック数 | 潜在能力指数 | 少ない先祖etc |
---|---|---|---|
16/128 | 1 | 12.00 | ダイタクヘリオス クリノハナ、ダイオライト |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
ダイタクヘリオス | 5.00 or 3.00 or 1.00 | セレタ系 (No.1-B) |
12番仔 (不受胎後) |
※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。
『鬼っ子種牡馬』サッカーボーイが、ナリタトップロードに続き2頭目のGIホースを輩出しました。自身はマイラータイプの競走馬でしたが、産駒は中長距離重賞で活躍しています。「最強世代」と言われた1985年生まれ世代の活躍馬の中ではもっとも成功している種牡馬で、ティコティコタックとナリタトップロードの他にキョウトシチー、ゴーゴーゼット、ツルマルガール、サウンドバリヤーと重賞勝ち馬を輩出しています。サッカーボーイは「Hyperionを経由しない」Whalebone分枝14代孫にあたり、ネオ異系として働きます。
サッカーボーイと、前述のダイタクヤマトの父であるダイタクヘリオスは、ともにマイルチャンピオンシップの勝ち馬です。サッカーボーイは他に阪神3歳Sを勝っていて、ダイタクヘリオスはマイルCSを2連覇しました。非繁殖期である秋季・冬季に行われるGIしか勝っていない内国産種牡馬というのは、割と期待できるのではないでしょうか。2000年10月現在のJRAリーディングサイアーの上位20傑を見ると、内国産種牡馬は4頭がランクインしています。8位にフジキセキ、11位にサクラバクシンオー、13位にサクラユタカオー、そして18位にサッカーボーイです。フジキセキは朝日杯3歳S勝ち、サクラバクシンオーはスプリンターズSを2連覇、サクラユタカオーは天皇賞・秋勝ち馬……。もちろん、これはあくまで「傾向」に過ぎません。20傑より下に目を向けると、21位にタマモクロス、22位にメジロマックイーン、26位にトウカイテイオー、27位にアンバーシャダイという春季GIの頂点に立った馬が林立しています。以下、29位にニホンピロウイナー、34位にヤマニンゼファー、41位にシンボリルドルフ、45位にメジロライアン、49位にダイタクヘリオスとなっています。内国産種牡馬の見解については、いずれ詳しく述べてみたいと思います−詳しく述べる前に、中島氏がお書きになりそうですが(苦笑)−。
ティコティコタックの牝系は、4号族シルバーバットン(1908)系。1911(明治44)年に輸入された同牝馬は、その父Bachelor's Buttonが8歳時種付けの0交配を受けた繁殖牝馬です。この牝系からは、1990年のマイルCSを勝ったパッシングショット以来のGI勝ち馬となりました。近親に主だった活躍馬は見当たらず、ティコティコタックが牝系の溜めていた力を一気に解放した結果となりました。バンブー牧場さんの信念が、ティコティコタックを生み出しました。
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
サッカーボーイ (Fine Top系) |
ブライアンズタイム (Hail to Reason系) |
ジョンティオンブル (フォルティノ系) |
ヴェンチア (Man o'War系) |
父の活性値 | 母父の活性値 | 祖母父の活性値 | 曾祖母父の活性値 |
0.75 (11歳時交配) |
1.25 (5歳時交配) |
0.50 (10歳時交配) |
0.00 (16歳時交配) |
父の分枝状況 | 母父の分枝状況 | 祖母父の分枝状況 | 曾祖母父の分枝状況 |
Whaleboneの14代孫 | Nearcoの5代孫 | Nearcoの5代孫 | Man o'War〜Matchem系 |
8代残牡先祖数 | マジック数 | 潜在能力指数 | 少ない先祖etc |
---|---|---|---|
16/128 | 2 | 8.00 | ジョンティオンブル ヴェンチア |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
ブライアンズタイム | 4.75 | シルバーバットン系 (No.4-G) |
3番仔 |
※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。
第60代皐月賞馬エアシャカールが、武豊騎手の手綱に操られて見事にニ冠達成となりました。サンデーサイレンス産駒としてダンスインザダークに次ぐ2頭目の菊花賞馬となりました。皐月賞馬とダービー馬の直接対決では、やっぱり皐月賞馬に軍配が上がりました。
エアシャカールのニ冠達成は素晴らしいことです。けれど、敢えて言わせてもらうならば、出走馬のメンバー構成が前年までと比べて希薄過ぎました。春のクラシックはともかくとして、秋の菊花賞に本賞金400万円の馬が出走できるような施行設定では「3歳最強馬決定戦」とは言えなくなります。淀を愛する関西人として、菊花賞がJCの前哨戦になってしまったのは残念です。
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
サンデーサイレンス (Hail to Reason系) |
Well Decorated (Bold Ruler系) |
Gleaming (Herbager系) |
Ribot (St.Simon系) |
父の活性値 | 母父の活性値 | 祖母父の活性値 | 曾祖母父の活性値 |
0.50 (10歳時交配) |
0.00 (8歳時交配) |
1.50 (6歳時交配) |
0.00 (16歳時交配) |
父の分枝状況 | 母父の分枝状況 | 祖母父の分枝状況 | 曾祖母父の分枝状況 |
Nearcoの5代孫 | Nearcoの4代孫 | Whaleboneの13代孫 | Eclipseの15代孫 |
8代残牡先祖数 | マジック数 | 潜在能力指数 | 少ない先祖etc |
---|---|---|---|
8/128 | 2 | 4.00 | Native Dancer0化 Gleaming |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
Gleaming (A Gleam) |
3.25 | 姉にエアデジャヴー (No.4-R) |
3番仔 (不受胎後) |
※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。
1987年のニッポーテイオー(1983.4.21)以来13年ぶりに、1番人気馬が府中の2000mGI戦を制しました。恐れ入谷の鬼子母神でございました、テイエムオペラオー。天皇賞・春、宝塚記念、そして天皇賞・秋と古馬中長距離GI3連勝となりました。レースの2着にはオールカマー勝ちから挑んだメイショウドトウ、3着には毎日王冠勝ちから挑んだトゥナンテが入りました。前走重賞勝ちを収めている馬による上位独占でした。
中島理論使いとしては、すでにデッドブラッドとなってしまった「直父系Northern Dancer有数値の牡馬」が重賞レースで連戦連勝を収めることはちょっと辛いところですが、やはり連勝している馬というのは、その連勝に見合う自尊心が備わっていくものなのですね。
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
オペラハウス (Northern Dancer系) |
Blushing Groom (Red God系) |
Key to the Kingdom (Bold Ruler系) |
Drone (Sir Gaylord系) |
父の活性値 | 母父の活性値 | 祖母父の活性値 | 曾祖母父の活性値 |
1.75 (7歳時交配) |
0.25 (9歳時交配) |
1.75 (7歳時交配) |
1.00 (4歳時交配) |
父の分枝状況 | 母父の分枝状況 | 祖母父の分枝状況 | 曾祖母父の分枝状況 |
Nearcoの4代孫 | Nasrullahの孫 | Nasrullahの孫 | Nearcoの4代孫 |
8代残牡先祖数 | マジック数 | 潜在能力指数 | 少ない先祖etc |
---|---|---|---|
17/128 | 0 | 17.00 | Northern Dancer有 Key to the Kingdom |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
オペラハウス | 4.50 | Dubai Milleniumも同牝系 (No.4-M) |
7番仔 (不受胎後) |
※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。
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