今回は2000年前期のGIレース勝ち馬の中島理論的回顧をしてみようと思います。その2回目は天皇賞・春、NHKマイルカップ、オークス、日本ダービーの4レースの勝ち馬たちです。
父はオペラハウス。欧州リーディングサイアー部門で独走を続ける名種牡馬Sadler's Wells(1981.4.11)の直仔です。Sadler's Wellsの父はNorthern Dancer(1961.5.27)。テイエムオペラオーが持つNorthern Dancerのポイント(乗算活性値)は「1.96875」です。Northern Dancerをクロスさせず直父系に有数値で持つ内国産牡馬として、テイエムオペラオーは1991年の菊花賞(GI)馬レオダーバン(1988.4.25)以来の長距離GI勝ち馬となりました。中島理論使い泣かせの存在となってしまったテイエムオペラオーですが、今年に入り京都記念(GII)、阪神大賞典(GII)、天皇賞・春(GI)、そして宝塚記念(GI)をも制し古馬の王道を突き進んでいます。素直にその強さを認めたいと思います。
テイエムオペラオー同様、今回の天皇賞2着馬ラスカルスズカ(1996.4.17)もNorthern Dancerをクロスさせず直父系に有数値で持つ牡馬となります。昨年−1999年−の1月くらいから、Northern Dancerをクロスさせず直父系に有数値で持つ牡馬たちの活躍が顕著になってきました。テイエムオペラオーとラスカルスズカの同期生ではオースミブライト(1996.4.10)、ヤマニンアクロ(1996.5.2)、ワンダーファング(1996.3.11)などがクラシックの前哨戦で重賞勝利を収めていました。
あるハーレムの中で主導勢力が移り変わる時、「デッドブラッド」となってしまった血脈を直父系に有数値で持つ牡馬が、「一瞬だけ」復活することがあるのかもしれないと思いました。また、テイエムオペラオーとラスカルスズカはともに父の2年度産駒ということで、産駒の絶対数が少ないゆえに活力があるとも思いました。
テイエムオペラオーは父オペラハウスの7歳時交配生産馬です。父の生体エネルギーがもっとも高まる時期に種付けしました。その父の生体エネルギーの高さが良い方向に向かったのでしょうか。「0遺伝」を知ると、どうしても「父が満8、16、24歳時交配生産」に注目してしまいます。しかし「父が満7、15、23歳時交配生産(もしくは父が満6、14、21歳時交配)」というのも重要な生産ポイントなのだと思います。中島氏関連ならアイネスフウジン(1987.4.10)にしても父が23歳時、Nureyev(1977.5.2)にしても父が15歳時、アバンティー(1979.6.15)にしても父が15歳時、アップセッター(1980.4.27)にしても父が7歳時、マルマツエース(1988.4.8)にしても父が7歳時、ベルエア(1978.5.20)にしても父が14歳時、ミスタールマン(1981.4.23)にしても父が14歳時の各交配となっています……。
#私は「0遺伝」のことを「厄年遺伝」なんて呼んでいます。自身の生体エネルギーの1番低下したときに「頑張った」から、仔どもがその「頑張った」分だけ走るというイメージです−父が満7、15、23歳時交配とは逆説的な考え方ですね−。
母はワンスウェド。アメリカ産の牝馬で1987年に輸入されました。初仔にCBC賞(GII)2着、阪急杯(GIII)3着など短距離で活躍したチャンネルフォー(1988)−同馬の父はNorthern Dancerの直仔であるノーザンディクテイター(1974)−を輩出し、テイエムオペラオーは不受胎後の7番仔として出産されました。皐月賞馬エアシャカール(1997.2.26)の所でも述べましたが、長期連年馬産が当たり前となってしまった昨今、不受胎で繁殖牝馬のお腹を休ませることが、かえって好結果につながることとなります。
牝系は5代母Portage(1952)の子孫が繁栄している4号族。曾祖母River Guideの産駒にデルマーフュチュリティ(米GI)2着のRomax(1982)、ハリウッドジュヴェナイル選手権(米GII)2着のTatum Canyon(1990)がいます。4代母Blue Canoeの曾孫にはブリーダーズカップ・マイル(米GI)勝ち馬Cozzene(1980.5.8)が輩出されています。5代母Portageからの分枝は、その仔Change Water(1969)を通じた系統が大繁栄しています。ティンバーカントリー(1992.4.14)、ツルマルツヨシ(1995.4.6)、Dubai Millenium(1996.3.20)などもこの牝系に属します。
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
オペラハウス (Northern Dancer系) |
Blushing Groom (Red God系) |
Key to the Kingdom (Bold Ruler系) |
Drone (Sir Gaylord系) |
父の活性値 | 母父の活性値 | 祖母父の活性値 | 曾祖母父の活性値 |
1.75 (7歳時交配) |
0.25 (9歳時交配) |
1.75 (7歳時交配) |
1.00 (4歳時交配) |
父の分枝状況 | 母父の分枝状況 | 祖母父の分枝状況 | 曾祖母父の分枝状況 |
Nearcoの4代孫 | Nasrullahの孫 | Nasrullahの孫 | Nearcoの4代孫 |
8代残牡先祖数 | マジック数 | 潜在能力指数 | 闘志 |
---|---|---|---|
17/128 | 0 | 17.00 | Northern Dancer有 Native Dancer有 |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
オペラハウス | 4.50 | 底力あり (No.4-M) |
7番仔 (不受胎後) |
※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。
父はMr.Prospector(1970.1.28)系の種牡馬Gulch。その代表産駒に米ニ冠馬サンダーガルチ(1992.5.23)、英1000ギニー(GI)勝ち馬Harayir(1992)、スーパーダービー(米GI)勝ち馬Wallenda(1990)など。自身は距離が9F以下のG1レースを7勝したチャンピオンスプリンターでしたが、12FのベルモントS(米GI)でも3着に入り距離に融通性のある所も見せました。1995年には北米リーディングサイアー第2位にもなっています。
母はNureyevの仔であるNet Dancer。初仔にイーグルカフェの全兄となる4勝馬ハセノガルチ(1994)、2番仔にディスタフH(米GII)勝ち馬Let(1995)を輩出した後、不受胎後の3番仔としてイーグルカフェを出産しました。皐月賞馬エアシャカール、天皇賞馬テイエムオペラオーから続く春の牡馬GIウイナーの密かなキーワード「不受胎後」産駒の3番手ですね。「人間が意図的に空胎をさせると、止まりにくくなる牝馬もいる」ということなので、そういう意味からも不受胎後は活力のある産駒が見込めるのではないでしょうか。
牝系は5代母Dinner Partner(1959)の子孫が繁栄している7号族。その中でも特にイーグルカフェの4代母にあたるNative Partner(1966)の子孫が繁栄していて、この牝系から第57代菊花賞(GI)馬ダンスインザダーク(1993.6.5)、第56代オークス(GI)馬ダンスパートナー(1992.5.25)、第61回日本ダービー(GI)2着馬エアダブリン(1991.4.21)、欧米3歳牡馬王者アラジ(1989.3.4)、欧州チャンピオンスプリンターAjdal(1984.4.2)などが輩出されています。また、5代母Dinner Partnerの仔に日本で名種牡馬となったジムフレンチ(1968.4.26)がいます。
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
Gulch (Mr.Prospector系) |
Nureyev (Northern Dancer系) |
Damascus (Teddy系) |
Le Fabuleux (St.Simon系) |
父の活性値 | 母父の活性値 | 祖母父の活性値 | 曾祖母父の活性値 |
1.00 (12歳時交配) |
0.75 (11歳時交配) |
0.75 (19歳時交配) |
1.00 (12歳時交配) |
父の分枝状況 | 母父の分枝状況 | 祖母父の分枝状況 | 曾祖母父の分枝状況 |
Phalarisの7代孫 | Phalarisの5代孫 | Bend Orの10代孫 | Eclipseの13代孫 |
8代残牡先祖数 | マジック数 | 潜在能力指数 | 闘志 |
---|---|---|---|
19/128 | 1 | 14.25 | Northern Dancer有 Native Dancer0化 |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
Gulch | 4.75 | 活力あり (No.7) |
3番仔 (不受胎後) |
※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。
父は当代の名種牡馬の1頭、ブライアンズタイム。初年度産駒に三冠馬ナリタブライアン(1991.5.3)、第55代オークス(GI)馬チョウカイキャロル(1991.3.26)。2年度産駒にGI4勝馬マヤノトップガン(1992.3.21)。8歳時交配となった4年度産駒にニ冠馬サニーブライアン(1994.4.23)、第42代有馬記念(GI)馬シルクジャスティス(1994.3.18)、朝日杯3歳S(GI)馬マイネルマックス(1994.4.13)。5年度産駒にニ冠牝馬ファレノプシス(1995.4.4)。シルクプリマドンナはブライアンズタイムの7年度産駒で、8頭目のGIホースです。
母バウンドトゥダンスは米国産の輸入繁殖牝馬。6番仔としてシルクプリマドンナを出産しました。なお、バウンドトゥダンスは生まれ故郷の米国にいったん戻されたそうです(Cozzeneを種付けされました)。生産者である早田光一郎氏の心持ちによると、また日本に帰ってくるそうです。
牝系は早田牧場お得意の13号族。ナリタブライアン、ビワハヤヒデ(1990.3.10)、ファレノプシスなどを輩出しているPacific Princess(1973)の系統はFamily No.13-A。マーベラスクラウン(1990.3.19)を輩出したモリタ(1978.10.30)の系統もFamily No.13-A。そして、シルクプリマドンナを輩出したこのバウンドトゥダンスの系統がFamily No.13-Cとなっています。この牝系はFrizette(1905)を20世紀の基礎繁殖牝馬とする系統で、Seattle Slew(1974.2.15)やMr.Prospector、Tourbillon(1928)もこの牝系から輩出されました。
母バウンドトゥダンスは不出走のまま繁殖入り。祖母Truly BoundはアーリントンワシントンラッシーS(米GII)、アシュランドS(米GII)など12戦9勝の活躍馬。バウンドトゥダンスは3番仔で、不受胎後の9番仔にキラヴァーレンS(愛GIII)の勝ち馬Shell Ginger(1994)を輩出。曾祖母NatashkaはアラバマS(現米GI)、モンマスオークス(現米GI)など16戦8勝の名牝。Natashkaの初仔にアサシS(愛GIII)の勝ち馬Arkadina(1969)。Arkadinaの分枝からは直仔に愛セントレジャー(GI)馬Dark Lomond(1985)、ブランドフォードS(英GII)の勝ち馬サウスアトランティック(1980.5.14)、シルクングライダーS(愛GIII)の勝ち馬Forlene(1977)−同馬はステイヤーズS(GIII=当時)の勝ち馬サージュウェルズ(1991.2.22)の母−などが輩出されています。Natashkaの3番仔にジョッキークラブS(英GIII)の勝ち馬Blood Royal(1971)、不受胎後の4番仔にテストS(米GIII=当時)の勝ち馬Ivory Wand(1973)。Ivory Wandの分枝からは直仔にオイロパ賞(独GI)&バーデン大賞(独GI)の勝ち馬Gold and Ivory(1981)、孫にナショナルS(愛GI)の勝ち馬Heart of Darkness(1988)、アフェクショネトリーH(米GIII)の勝ち馬Poolesta(1989)などが輩出されています。Natashkaの6番仔にジョーマグラス記念(現愛チャンピオンS、GI)の勝ち馬Gregorian(1976)、そして8番仔にTrulyBoundを輩出しました。
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
ブライアンズタイム (Hail to Reason系) |
Northern Dancer (Northern Dancer系) |
In Reality (Matchem系) |
Dedicate (St.Simon系) |
父の活性値 | 母父の活性値 | 祖母父の活性値 | 曾祖母父の活性値 |
0.75 (11歳時交配) |
0.00 (24歳時交配) |
1.25 (13歳時交配) |
0.50 (10歳時交配) |
父の分枝状況 | 母父の分枝状況 | 祖母父の分枝状況 | 曾祖母父の分枝状況 |
Nearcoの5代孫 | Nearcoの孫 | Man o'War〜Matchem系 | Eclipseの15代孫 |
8代残牡先祖数 | マジック数 | 潜在能力指数 | 闘志 |
---|---|---|---|
9/128 | 2 | 4.50 | Northern Dancer0化 Native Dancer0化 |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
In Reality (Truly Bound) |
4.25 | 活力あり (No.13-C) |
6番仔 |
※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。
父はサンデーサイレンス。日本ダービーの勝ち馬は初年度産駒のタヤスツヨシ(1992.4.26)、4年度産駒のスペシャルウィーク(1995.5.2)、5年度産駒のアドマイヤベガ(1996.3.12)についで4頭目。供用6年の間に4頭の日本ダービー馬を輩出。アグネスフライトはサンデーサイレンス産駒15頭目のGIホースです。
母はアグネスフローラ。第50代桜花賞(GI)馬で、1990年の最優秀3歳牝馬に選ばれました−昨年のアドマイヤベガ&ベガ(1990.3.8)親仔に続いて、2年連続で桜花賞馬(最優秀3歳牝馬)の仔が日本ダービー馬となりましたね−。さらにアグネスフローラの母は第40代オークス(現GI)馬で、1979年の最優秀3歳牝馬アグネスレディー(1976)。足掛け21年、母仔3代クラシック制覇の偉業達成となりました。アグネスレディーを管理したのが長浜彦三郎調教師、アグネスフローラとアグネスフライトを管理したのがその実子、長浜博之調教師。アグネスレディー、フローラ、フライト3頭すべての担当は大川鉄雄厩務員、そして3頭すべての鞍上は河内洋騎手。受け継がれて、受け継がれて母仔3代。本当に大偉業だと思いました。
牝系は4代母ヘザーランズ(1957)を日本の基礎繁殖牝馬とする1号族。前述の通り母は桜花賞馬、祖母はオークス馬でともに最優秀3歳牝馬と活躍しました。曾祖母イコマエイカン(1967.5.18)から京阪杯(現GIII)の勝ち馬タマモリマンド(1975.3.28)、第36回桜花賞(現GI)2着馬クインリマンド(1973.4.1)、小倉大賞典(現GIII)の勝ち馬グレイトファイター(1972.4.14)など活躍馬が輩出されました−アグネスレディーも含めたこれら4頭の兄弟馬たちは、すべてリマンド(1965)の仔どもとなります−。他の近親に、アグネスレディーの孫でチューリップ賞(GIII)の勝ち馬アグネスパレード(1991.5.9)がいます。
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
サンデーサイレンス (Hail to Reason系) |
ロイヤルスキー (Bold Ruler系) |
リマンド (Blenheim系) |
Sallymount (Hyperion系) |
父の活性値 | 母父の活性値 | 祖母父の活性値 | 曾祖母父の活性値 |
0.50 (10歳時交配) |
1.00 (12歳時交配) |
0.50 (10歳時交配) |
0.50 (10歳時交配) |
父の分枝状況 | 母父の分枝状況 | 祖母父の分枝状況 | 曾祖母父の分枝状況 |
Nearcoの5代孫 | Nearcoの4代孫 | Birdcatcherの12代孫 | Whaleboneの12代孫 |
8代残牡先祖数 | マジック数 | 潜在能力指数 | 闘志 |
---|---|---|---|
16/128 | 2 | 8.00 | Northern Dancer無 Native Dancer無 |
形相の遺伝 | 料の遺伝 | 牝系 | 何番仔? |
ロイヤルスキー | 3.00 | 底力あり (No.1-L) |
4番仔 |
※潜在能力は数値が少ないほど大きいことを示しています。
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