世界のダービー勝ち馬(2001年編)

Anabaa Blue
  • 鹿毛
  • 1998.4.12生
  • 英国・エトレアム牧場&M3エルヴァージュ生産
  • 馬主・C-E.ミモウニ
  • 仏国・C.ラーナー厩舎
Anabaa Blueの4代血統表
Anabaa(USA)
鹿毛 1992
種付け時活性値:1.25
Danzig
鹿毛 1977.2.12
Northern Dancer
鹿毛 1961.5.27
Nearctic 1954.2.11
Natalma 1957.3.26
Pas de Nom
黒鹿毛 1968
★Admiral's Voyage 1959
Petitioner 1952
Balbonella
黒鹿毛 1984
★ゲイメセン
黒鹿毛 1975.5.16
Vaguely Noble 1965
Gay Missile 1967
Bamieres
黒鹿毛 1978
Riverman 1969
Bergamasque 1969
Allez Les Trois(USA)
栗毛 1991
仔受胎時活性値:1.50
<3勝。仏GIII勝ち>
Riverman(USA)
鹿毛 1969
種付け時活性値:1.25
★Never Bend
鹿毛 1960.3.15
Nasrullah 1940.3.2
Lalun 1962
River Lady
鹿毛 1963
Prince John 1953
Nile Lily 1954
Allegretta(GB)
栗毛 1978
仔受胎時活性値:0.50
<2勝。英GIII2着>
Lombard(GER)
栗毛 1967
種付け時活性値:0.50
Agio 1955
Promised Lady 1955
Anatevka(GER)
栗毛 1969
仔受胎時活性値:2.00 or 0.00
Espresso(GB)
栗毛 1958
種付け時活性値:0.50
Almyra(GER)
栗毛 1962
仔受胎時活性値:1.50
Anabaa Blueの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
Anabaa Blue
(Northern Dancer系)
Riverman
(Never Bend系)
Lombard
(Teddy系)
Espresso
(Blandford系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
1.25
(5歳時交配)
1.25
(21歳時交配)
0.50
(10歳時交配)
0.50
(10歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Nearcoの4代孫 Nearcoの3代孫 Bend Orの11代孫 Birdcatcherの11代孫
Anabaa BlueのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 マジック数 潜在能力値 少ない血etc
17/128 0 17.00 父初年度産駒
Lombard Espresso
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
Anabaa 6.00 or 4.00 従兄弟Galileo
(No.9-H)
2番仔

潜在能力値は数値が少ないほど大きいことを示しています。

[Notes]

今年で161回を数える仏ダービーことジョッキークラブ賞。仏国伝統の1戦を制したのは、3番人気の仏国馬Anabaa Blueでした。好発進2番手からの先行押し切り勝ちという内容。勝ち時計は2分27秒90−仏ダービーレコードはBering(1983)の2分24秒10−。鞍上は、今年の2月に来日して6勝を挙げたC.スミヨン騎手。翌日に20歳の誕生日を控えた、19歳最後の日に栄光のダービージョッキーとなりました。管理されるC.ラーナー調教師ともども仏ダービー初制覇。レースの2着には、前走のリュパン賞(仏GI)ではAnabaa Blueを抑えて1着だったChichicastenango(1998)、3着には英国馬Grandera(1998)が入りました。

Anabaa Blueの血統表でまず目に付くのは、Riverman4×2の近親交配ですね。中島理論的解釈をするならば、Rivermanがその父Never Bend8歳時の0交配馬のため、このRivermanクロスは1代のブルー0クロスとなります。4代血統構成の最優勢先祖馬は父Anabaaと判断します。形相もそのままAnabaaと考えますが、Anabaa自身は「全欧チャンピオンスプリンター」という短距離馬でした。同数値でもRivermanを最優勢先祖とするならば、母Allez Lez Troisは2100mの重賞を勝った馬ですから、距離をこなしても不思議ではありません。

Anabaa Blueの牝系は、9代母Arabis(1915)から続く、馬名の頭文字「A」の独国伝統牝系となります。母Allez Les Troisは3勝を挙げ、その主な勝ち鞍に距離2100mのフロール賞(仏GIII)があります。Anabaa Blueは2番仔となります。祖母Allegrettaは2勝を挙げ、英オークストライアル(GIII)2着があります。その繁殖成績は極めて優秀で、Allez Lez Troisの他にも凱旋門賞馬Urban Sea(1989.2.18)、英2000ギニー馬King's Best(1997.1.24)という2頭のGIホースを送り出しています。Urban Seaの繁殖成績も素晴らしく、ガリニュールS(愛GIII)の勝ち馬Urban Ocean(1996)、愛オークス(GI)2着のMelikah(1997)、そして今年の英ダービー愛ダービーを不敗で通過した超大物Galileo(1998.3.30)を立て続けに送り込んでいます。Anabaa BlueとGalileoは従兄弟になりますね。英仏愛という欧州三大ダービーの勝ち馬が同牝系から出たということ。洋の東西を問わず「牝系の勢い」というものは大切ですね。

愛ダービーは見送ったようで、秋の最大目標は凱旋門賞ということです。Galileoはブリーダーズカップ・クラシックを目指すそうですから、もしかしたら、「牝系近親馬の連動する活躍」を再び見ることができるかも知れませんね。鞍上のC.スミヨン騎手とともに、若い力の躍進に期待します。

[通算成績]

6戦3勝。2歳時2戦0勝、3歳時4戦3勝。
主な勝ち鞍に仏ダービー(GI)、ノアイユ賞(仏GII)。

[本文より濃い余談]

エルハーブ(1991.5.24)やピルサドスキー(1992.4.23)、昨年の英愛ダービー&凱旋門賞馬Sinndar(1997.2.27)、そして上記のAnabaa Blueなどの例を見ると、Danzig系は、代を経ることにより、距離への適応力が増していくようです。欧米では意識的にそういう配合をしているのでしょう。母方にスタミナの裏付けを持たせておく。父系勢力を伸ばして行くには、父系の得意距離が、短距離から次第に長距離へとシフトして行くことが必要なようです。Northern Dancer系で父系を伸ばしていけるのは、Danzig系、Nureyev(1977.5.2)系、Deputy Minister(1979.5.17)系、Topsider(1975)系など「現役時代はスピードタイプだった馬」を基礎とする父系と考えます。自身が長距離GIも制したNijinsky(1967.2.21)の系統は、直仔がクラシックディスタンスで強さを見せたものの、Northern Dancer隆盛の初期から多数の種牡馬が導入されたため、飽和状態に陥ってしまい苦戦中です。欧州では、アガ・カーン4世の生産所有馬Kahyasi(1985)が奮闘しているものの、牝馬優勢の仔出しです。日本では、同父系の0交配を受けた快速馬ネーハイシーザー(1990.4.27)が、その種牡馬としての能力に見合うほどの交配頭数を得ていません。日本の軽い馬場に適性を見せるLyphard(1969)の系統は、その主流を成すはずだったダンシングブレーヴ(1983.5.11)とその息子たちが、軒並み日本に導入されてしまったため、先行きは不安です。「世界的良血」の評価を受けるキングヘイロー(1995.4.28)がどこまで奮起してくれるのか。日本のNorthern Dancer系種牡馬の嚆矢であるノーザンテースト(1971.3.15)は、残念ながら「内国産馬の母父大王」として終わってしまうような感じです。直孫メジロライアン(1987.4.11)に期待は集まりますが、果たしてどうなるのでしょうか。あるいは、中国にいるメジロアルダン(1985.3.28)に願いを託さなければならないのでしょうか。欧州の種牡馬王・Sadler's Wells(1981.4.11)は、自身がマイルから10Fを得意としたことから、父系を伸ばせそうな感じはします。けれど、やはり欧州で増えすぎました。Barathea(1990.3.2)のように短距離得意だった0交配産駒や、南半球で活かされたFort Wood(1990)から出たHorse Chestnut(1995.8.19)に期待します。日本に来たハンティングホーク(1990.4.17)は、その良血−In the Wings(1986)の半弟−が再評価されて愛国に帰って行きました。Sadler's Wellsの0交配産駒といえば、1998年生まれの現3歳世代にも期待がかかります。Sadler's Wellsの全弟であるFairy King(1982.3.4)の系統も、0交配産駒であるシンコウキング(1991.4.24)やTurtle Island(1991.3.16)に期待します。ただし、シンコウキングは使い方が難しい種牡馬。自身が強いNorthern Dancerクロスを持つ馬なので、母方にはアウトブリード馬を持ってくることが必要です。そういう意味では、まったく異国の地である新国に腰を落ち着けたのは正解だったと思います。「シンコウ」のオーナーである安田修さんは、シンコウフォレスト(1993.4.29)を愛国に返したり、シンコウキングを新国へ送ったりして「血の還元」を図っている偉い方です。アドバイザーである鬼塚義臣さんの見識も、それを助けているのでしょう。……最後は脇道にそれましたが、20世紀最高の種牡馬の血を、良いかたちで、21世紀もつなげて行って欲しいと願います。

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