2000年のクラシック候補生たちを中島理論的に分析していこうという企画です。
第14回目の今回はチューリップ賞(GIII)の勝ち馬、ジョーディシラオキ号を分析してみましょう。
以下の文章中、ジョーディシラオキは本馬と称します。4代血統構成において父は壱、母父は弐、祖母父は参、曾祖母父は四と表します。
ジョーディシラオキ 牝 鹿毛 1997.4.24生 栗東・松田国英厩舎 Family No.3-L
[戦績]
チューリップ賞(GIII)1着。3月5日の時点で13戦4勝(地方、中央含めて)。
[血統]
父は米国産のオジジアン(1983)。現役時代の主な勝ち鞍にフュチャリティS(GI)、ドワイヤーS(GI)、ジェロームH(GI)等。通算10戦7勝。本馬は父の本邦供用初年度産駒となります(米国時代からの通算ならば、9年度産駒)。ちなみに、オジジアンのオーナーは馬名を「オーガイジャン」と呼んでいたそうです。それは日本人の「オー、外人」という言葉の発音から取られたそうです(なんのこっちゃ)。父の他の活躍馬に、エイシンワシントン(1991.5.5)、Ramblin Guy(1991)、Dice Dancer(1995)、バトルライン(1993.5.20)、タイキダイヤ(1996.4.1)等がいます。産駒にGI勝ち馬はまだ出現していません。中島氏は『競馬最強の法則』誌、1999年8月号、P22〜P23の新種牡馬オジジアンの分析の項において、産駒の期待度を「A」とされていました(A〜Eまで5段階評価。Aが最上位)。
母はジョーディアレスト(1983.4.24)。本馬と母は誕生日の日付けが同じ4月24日ですね。母の現役時代は新馬、400万下の2勝だけながらオークス(GI)5着。同馬の弟に京都4歳特別(GIII)、毎日杯(GIII)の勝ち馬スターサンシャイン(1986.4.18)。牝系は、日本の名牝系であるフロリースカップ(1904)系。同馬は明治40年(1907年)に小岩井農場が英国より輸入。100円が現在の1億円に当たると言われるその当時、5500円で輸入された高額繁殖牝馬。近年もっとも活力にあふれる日本在来牝系のひとつです。本馬はフロリースカップ系フロリスト(1919)分枝、シラオキ(1946.4.7)系に属します。本馬の曾祖母は、10億円馬となったスペシャルウィーク(1995.5.2)と同じミスアシヤガワ(1964.5.24)です。他にもシラオキ系からは菊花賞馬マチカネフクキタル(1994.5.22)、桜花賞馬シスタートウショウ(1988.5.25)等が出ています。今年−2000年−の3歳牡馬クラシック候補の1頭であるマイネルビンテージは、フロリースカップ系フロリスト分枝の別系、サンキスト(1944)系に属します。
シラオキ系の簡単な系統図を示しておきます(<pre>タグ使用)。
シラオキ(1946) 父プリメロ(1931) |コダマ(1957) 父ブッフラー(1952) 第27代日本ダービー馬 |ワカシラオキ(1960) 父ソロナウェー(1946) ||ローズトウショウ(1965) 父テューダーペリオッド(1957) |||グレイトウショウ(1974) 父シルバーシャーク(1963) ||||アテナトウショウ(1981) 父トウショウボーイ(1973) |||||マチカネフクキタル(1994) 父クリスタルグリッターズ(1980) 第58代菊花賞馬 |||コーニストウショウ(1977) 父ダンディルート(1972) ||||シスタートウショウ(1988) 父トウショウボーイ 第51代桜花賞馬 |ミスアシヤガワ(1964) 父ヒンドスタン(1946) ||ミスシラオキ(1975) 父ロムルス(1959) |||ジョーディアレスト(1983) 父キタノカチドキ(1971) ||||ジョーディシラオキ(1997) 父オジジアン(1983) |||スターサンシャイン(1986) 父サンシャインボーイ(1974) ||レディーシラオキ(1978) 父セントクレスピン(1956) |||キャンペンガール(1987) 父マルゼンスキー(1974) ||||スペシャルウィーク(1995) 父サンデーサイレンス(1986) 第65代日本ダービー馬
本馬の8代残牡先祖数は『17/128』と推定します。残牡先祖数はやや大きな値となりましたが、本馬の血統構成中にNorthern Dancer(1961.5.27)&Native Dancer(1950.3.27)の姿はなく、血のイニシアチヴを持っている馬と言えます。4代血統構成を見ると、壱はオジジアン、弐はキタノカチドキ(1971.3.27)、参はロムルス(1959)、四はヒンドスタン(1946)です。壱はTeddy(1913)系の種牡馬。Bend Or(1877)分枝の種牡馬ながら、現在では亜流に属する父系です。Teddy系は、かつて米国で大きく繁栄しましたが、血の氾濫により直父系は勢力が減退してしまいました。壱の直系祖父にあたるSword Dancer(1956.4.24)が、その父Sunglow(1947)の『0の遺伝(8歳時交配)』を受けたことにより息を吹き返し、この父系が、現在唯一と言ってよいTeddy系活性のサイアーラインです。弐は1974年の皐月賞、菊花賞を制したニ冠馬。同馬の直牝系はフロリースカップ系第六フロリースカップ(1915)分枝です。ゆえに本馬はフロリースカップ8×9の牝馬クロスを持ちます。弐は、初代「お助けボーイ」ことテスコボーイ(1963.1.??)の代表産駒として大きな期待を持たれ種牡馬入りしましたが、6世代の産駒を残して早世しました。参と四はSt.Simon(1881)系の種牡馬。この参の位置にロムルス、四の位置にヒンドスタンを配した近年の活躍馬にワンダーパヒューム(1992.3.7)&ワンダーファング(1996.3.11)姉弟がいます。
Bend Or系馬×2、St.Simon系馬×2の血統構成です。ゆえに異系マジックはありません(注)。本馬の潜在能力指数は『17』のままです。なお、本馬の4代血統構成馬の活性値が、それぞれ1.25、0.75、1.75、0.25と別数値にあることが、知的素質の向上に役立っていると考えます。中島国治著、血とコンプレックス、P270、ミホノブルボンの解説を参照しました
本馬の活力の源泉は、マイノリティ(父が新種牡馬であること&母父が早世のために産駒数が少ないこと)、血統構成(Northern DancerとNative Dancerを持たない&4代血統構成馬の活性値の違い)、そして牝系の勢いにあると考えます。
本馬の最優性先祖は祖母父ロムルス(15歳時交配で活性値1.75)です。形相遺伝は祖母のミスシラオキ(1975)と判断します。ミスシラオキの形相はロムルスと考えます。また、本馬の料的遺伝の値は3.75です。料的遺伝の値が3.75という値は、平均の4.00を下回り、オープン馬としては小さく、連戦に向くタイプとは思えません。ゆったりとしたローテーションが望ましいです。
[最後に]
ミスアシヤガワの曾孫にまた活躍馬が輩出されました。スペシャルウィークが引退、種牡馬入りしたと思ったら、ジョーディシラオキが重賞勝ち馬となりクラシック戦線に名乗りをあげる……。牝系の勢いというものは凄いですね。フロリースカップ系の底力恐るべしという感じです。チューリップ賞は雨中、不良馬場の中での争いでしたから、ジョーディシラオキの負担も大きかったと思います。充分に休養を取って、桜花賞及びオークスでは元気な姿を見せてください。