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8代残牡先祖数理論の潜在能力指数の補正を行なうために導入された考え方。従来の中島理論の中核である『雑種性』の考え方から展開されました。
Eclipse系がサラブレッドの父系の90%以上を占めていると言われる現在、サラブレッドの血統構成にHerod系、Matchem系を所有していることは、とても大きな意味合いを持ちます。
競走馬の4代血統構成を確認した際、父、母父、祖母父、曾祖母父の各父に、どのような父系が配されているかを考慮します。
↓4代血統構成がすべてEclipse系の時。 | |||
Eclipse系 | Eclipse系 | Eclipse系 | Eclipse系 |
1種類の父系を用いた配合で、異系マジックは『0』となります。 |
↓4代血統構成に、1系でもHerod系 or Matchem系がある時−位置は問いません−。 | |||
Eclipse系 | Eclipse系 | Eclipse系 | Herod系 (Matchem系) |
2種類の父系を用いた配合で、異系マジックは『1』となります。 |
↓4代血統構成に、Herod1系、Matchem1系がある時−位置は問いません−。 | |||
Eclipse系 | Eclipse系 | Herod系 | Matchem系 |
3種類の父系を用いた配合で、異系マジックは『2』となります。 |
異系マジックの値は、マジック係数となります。異系マジックにより、潜在能力指数は小さな値になっていきます(小さな値の方が潜在能力は強大と判定されます)。
潜在能力指数=8代残有数値牡先祖数×指数補正値で導出され、指数補正値={(4-『マジック係数』)/4}で導出されます。
1種類の父系を用いた配合で、異系マジックが『0』の時。
潜在能力指数=8代残牡先祖数×指数補正値
=8代残牡先祖数×{(4-『マジック係数』)/4}
=8代残牡先祖数×{(4-『0』)/4}
=8代残牡先祖数×4/4
=8代残牡先祖数×1(潜在能力指数は8代残牡先祖数のそのままの値)
2種類の父系を用いた配合で、異系マジックが『1』の時。
潜在能力指数
=8代残牡先祖数×{(4-『1』)/4}
=8代残牡先祖数×3/4
=8代残牡先祖数×0.75(潜在能力指数は8代残牡先祖数の75%の値)
3種類の父系を用いた配合で、異系マジックが『2』の時。
潜在能力指数
=8代残牡先祖数×{(4-『2』)/4}
=8代残牡先祖数×2/4
=8代残牡先祖数×0.5(潜在能力指数は8代残牡先祖数の50%の値)
上記の通り、潜在能力指数はマジック係数により求められる指数補正値で補正されます。
例えば、1992年のニ冠馬・ミホノブルボンならば、
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
マグニテュード | シャレー | ユアハイネス | ライジングフレーム |
Eclipse系 | Herod系 | Matchem系 | Eclipse系 |
という4代血統構成により、異系マジックは『2』となります。
彼の8代残牡先祖数は『16/128(推定)』ですから、異系マジック『2』より、
『潜在能力指数』=8代残牡先祖数×0.5=16×0.5=『8.00』となります。
基本的な異系マジックというのは、この3大父系を用いた考え方でOKです。
「同種の父系でも、同一先祖からの分枝が12代以上の場合は異系として判断できる」という考え方がネオ異系マジックです。こいつがちょっとややこしいんです。
例えば、1998年の日本ダービー馬・スペシャルウィーク(1995.5.2)ならば、
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
サンデーサイレンス | マルゼンスキー | セントクレスピン | ヒンドスタン |
Eclipse系 | Eclipse系 | Eclipse系 | Eclipse系 |
という 4 代血統構成になります。
上記の通り、4代血統構成すべてがEclipse系です。その分枝の様子を以下の表にまとめてみます。
分枝数 | 父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|---|
0 | サンデーサイレンス | マルゼンスキー | セントクレスピン | ヒンドスタン |
1 | Halo | Nijinsky | Aureole | Bois Roussel |
2 | Hail to Reason | Nothern Dancer | Hyperion | Vatout |
3 | Turn-to | Nearctic | Gainsborough | Prince Chimay |
4 | Royal Charger | Nearco | Bayardo | Chaucer |
5 | Nearco | Pharos | Bay Ronald | St.Simon |
6 | Pharos | Phalaris | Hampton | Galopin |
7 | Phalaris | Polymelus | Lord Clifden | Vedette |
8 | Polymelus | Cyllene | Newminster | Voltigeur |
9 | Cyllene | Bona Vista | Touchstone | Voltaire |
10 | Bona Vista | Bend Or | Camel | Blacklock |
11 | Bend Or | Doncaster | Whalebone | Whitelock |
12 | Doncaster | Stockwell | Waxy | Hambletonian |
13 | Stockwell | The Baron | Pot 8O's | King Fergus |
14 | The Baron | Birdcatcher | Eclipse | Eclipse |
15 | Birdcatcher | Sir Hercules | Marske | Marske |
16 | Sir Hercules | Whalebone | Squirt | Squirt |
17 | Whalebone | Waxy | Bartlet's Childers | Bartlet's Childers |
18 | Waxy | Pot 8O's | Darley Arabian | Darley Arabian |
19 | Pot 8O's | Eclipse | (不明) | (不明) |
20 | Eclipse | Marske | (不明) | (不明) |
分枝数 | 父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
表の1番左側の縦に並ぶ数字は、「??」の数の所にいる馬に対して、「0」の所にいる馬が何代孫に当たるかを示しています。例えば、サンデーサイレンスの列の「5」の所にNearcoがいます。ということは、サンデーサイレンスはNearcoの5代孫に当たります。同じ様に考えて、マルゼンスキーはNearcoの4代孫に当たります。
今すでに述べてしまいましたが、父系のサンデーサイレンスと母父のマルゼンスキーはそれぞれ同一先祖(Nearco)からの分枝が5代孫、4代孫ということで同族圏内にいます。
ここからがややこしいのですね。
祖母父のセントクレスピンは他の血統構成馬との同一先祖を探ると、セントクレスピン自身の11代前の先祖Whaleboneが父系と母父の中に見つかります。父系と母父の中では、Whaleboneがそれぞれの17代前、16代前の先祖になっています。じゃあ、上で述べた「同種の父系でも、同一先祖からの分枝が12代以上の場合は異系として判断できる」が適応できるのかと言うと、そうではありません。セントクレスピン自身の分枝数が11代なのでこれは異系と判断できないのです。あと1代分、分枝数が増えていたら異系として判断できるのですが……。以上より、祖母父も父系、母父と同属と判断します。
曾祖母父のヒンドスタン。他の血統構成馬との同一先祖を探るとヒンドスタン自身の14代前の先祖Eclipseが父系、母父、祖母父の中で見つかります。それぞれ、20代前、19代前、14代前の先祖になっています。祖母父との違いは、ヒンドスタン自身の分枝数が12代以上ということです。ヒンドスタン自身が、Eclipseの14代孫となっています。ゆえにネオ異系マジックが生じます。この馬だけがスペシャルウィークの4代血統構成内で唯一、ネオ異系マジックとしてカウントされます。
まとめると、
父 | 母父 | 祖母父 | 曾祖母父 |
---|---|---|---|
サンデーサイレンス | マルゼンスキー | セントクレスピン | ヒンドスタン |
Nearcoの5代孫 | Nearcoの4代孫 | Whaleboneの11代孫 | Eclipseの14代孫 |
となり、曾祖母父のヒンドスタンにネオ異系マジックが生じます。異系マジックのカウントは『1』となりますね。
スペシャルウィークの8代残牡先祖数は『10/128(中島氏の公式値)』ですから、
ネオ異系マジック『1』より、『潜在能力指数』=8代残牡先祖数×0.75=10×0.75=『7.5』となります(※ネオ異系マジックでも指数補正値は変わりません)。
追記
ネオ異系マジックが初めて登場した時(『競馬最強の法則』誌、1998年5月号)、ネオ異系マジックひとつに対して、マジック係数は『0.5』でした。ネオ異系マジック『1』の時ならば、
潜在能力指数(ネオ異系マジックの初登場時)
=8代残牡先祖数×{(4-『マジック係数』)/4}
=8代残牡先祖数×{(4-『0.5』)/4}
=8代残牡先祖数×3.5/4
=8代残牡先祖数×0.875(潜在能力指数は8代残牡先祖数の87.5%の値)
スペシャルウィークの8代残牡先祖数は『10/128(中島氏の公式値)』ですから、
ネオ異系マジック『1』(マジック係数『0.5』)で、『潜在能力指数』=8代残牡先祖数×0.875=10×0.875=『8.75』となっていました。
しかし、『競馬最強の法則』誌、1999年5月号の中島氏の記事を読むと、マジック係数は異系マジック、ネオ異系マジックともに『1(マジック1つに対して)』となっていました。マジック係数の見解は人によって意見の分かれるところです。
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