フサイチゼノン  [ Home >> B&B >> 2000年クラシック牡馬編 ]

2000年のクラシック候補生たちを中島理論的に分析していこうという企画です。
第15回目の今回は弥生賞(GII)の勝ち馬、フサイチゼノン号を分析してみましょう。

以下の文章中、フサイチゼノンは本馬と称します。4代血統構成において父は壱、母父は弐、祖母父は参、曾祖母父は四と表します。


フサイチゼノン   牡   黒鹿毛   1997.3.2生   栗東・田原成貴厩舎   Family No.16-A

[戦績]
弥生賞(GII)1着、こぶし賞(500万下)1着。3月5日の時点で4戦3勝。

[血統]
父は米国産のサンデーサイレンス(1986.3.25)。同馬は、日本競馬の常識を覆し続けるスーパーサイアー。3頭の日本ダービー馬−スペシャルウィーク(1995.5.2)、アドマイヤベガ(1996.3.12)、タヤスツヨシ(1992.4.26)−をはじめとする合計12頭のGI勝ち馬を輩出、他に重賞勝ち馬が多数。2000年のクイーンC(GIII)の勝ち馬フューチャサンデーも同馬の産駒。1995年〜1999年、日本リーディングサイアー。同馬は、その父Halo(1969.2.7)の16歳時交配による『0の遺伝』を受けた名馬です。現役時代の成績は14戦9勝、2着5回。主な勝ち鞍にケンタッキー・ダービー(GI)、プリークネスS(GI)、ブリーダーズカップ・クラシック(GI)等。本馬は父の6年度産駒となります。

母はエリザベスローズ(1989.5.3)。現役時代の主な勝ち鞍にセントウルS(GIII、阪神1400mを1分22秒1のレコード勝ち)、コーラルS(OP)、葵S(OP)等。通算17戦5勝。本馬は母の3番仔となり、母7歳時交配で生産された産駒です。牝系は、本馬の祖母である輸入牝馬ノベンバーローズ(1982)を日本の牝系祖とする系統。本馬の近親には米国の名種牡馬Fappiano(1977)、ケンタッキー・オークス(GI)を勝ったKeeper Hill(1995)、トップフライトH(GI)を勝ったClabber Girl(1983)、輸入種牡馬オジジアン(1983)等がいます。牝系をさかのぼると、名繁殖牝馬Plucky Liege(1912)が本馬の10代母にいます。同牝馬は、その父Spearmint(1903)の『0の遺伝』を受け、直仔に、名種牡馬となったSir Gallahad(1920)とBull Dog(1927)という全兄弟−両馬の父はTeddy(1913)−やAdmiral Drake(1931)、英ダービーを勝ったBois Roussel(1935)−同馬はその父Vatout(1926)の『0の遺伝』を受けた名馬−等を輩出しました。20世紀を代表する名繁殖牝馬の1頭と言えるでしょう。現在も活力のある牝系として、子孫が世界中で繁栄しています。

本馬の8代残牡先祖数は『15/128』と推定します。8代に残る牡先祖数はやや多くなりました。しかし、父サンデーサイレンスは7代までに残る非0化牡先祖の総数が『28/127(推定)』と少なく、それが活力のある産駒を生み出している要因のひとつとなっています。本馬の8代までに残る非0化牡先祖の総数は『51/255(推定)』です。8代までに存在する牡先祖の80%を0化したことにより、本馬のもつ種の純粋性は、より強固なものになりました。

同様の例にファビラスラフイン(1993.4.13)。同馬は8代残牡先祖数が『16/128(推定)』ですが、8代までに残る非0化牡先祖の総数は『54/255(推定)』です。同じくスペシャルウィーク(1995.5.2)の8代残牡先祖数は『10/128』ですが、8代までに残る非0化牡先祖の総数は『38/255(推定)』です。近い代で『0の遺伝』を受けた馬は0化先祖の総数が当然増えます。

本馬の4代血統構成を見ると、壱はサンデーサイレンス、弐はノーザンテースト(1971.3.15)、参はCaro(1967)、四はWhat a Pleasure(1965)です。壱、弐、参、四のいずれもがNearco(1935.1.24)系の種牡馬。壱がその父Haloの『0の遺伝』を受けているため、本馬のNearcoクロスは弊害なく先祖の数を減らしています。弐はNorthern Dancer(1961.5.27)の直仔で、日本競馬の歴史に残る名種牡馬。本馬の持つNorthern Dancerの乗算活性値は、母が弐の17歳時交配により活性値0.25、弐がその父Northern Dancerの9歳時交配により活性値0.25であることから、0.25×0.25=0.0625となり、0に極めて近い値となりました。ゆえに本馬の持つNorthern Dancerは準0化されます。参はGrey Sovereign(1948)の孫。仏国、英国で出走し通算19戦6勝。主な勝ち鞍に仏2000ギニー(現GI)、ガネー賞(現GI)、イスパーン賞(現GI)等。代表産駒に仏ダービー馬クリスタルパレス(1974.3.25)、ブリーダーズカップ・マイル勝ち馬Cozzene(1980.5.8)、仏2000ギニー馬Siberian Express(1981)、牝馬ながらケンタッキー・ダービーを勝ったWinning Colors(1985)、輸入種牡馬ティッカネン(1991.1.23)の兄で愛セントレジャー馬Turgeon(1986)、加三冠馬With Approval(1986)、JC馬ゴールデンフェザント(1986.4.23)等。四はBold Ruler(1954.4.6)の直仔で、1975、76年の米国首位種牡馬。代表産駒にケンタッキー・ダービー(米GI)馬Foolish Pleasure(1972.3.23)、フロリダ・ダービー(米GI)馬Honest Pleasure(1973)、フュチュリティS(米GI)の勝ち馬For the Moment(1974)、アーリントン・クラシック(米GI)の勝ち馬Fairway Phantom(1978)等。輸入種牡馬ディカードレム(1979)の父でもあります。

4代血統構成馬の父系分枝状況に目を向けると、
壱  Nearcoの5代孫
弐  Nearcoの3代孫
参  Nasrullah(1940.3.2)の3代孫
四  Nasrullahの孫

4系すべてがNearco系の同族圏内馬たちです。本馬にネオ異系マジックは生じません。ゆえに本馬の潜在能力指数は『15』のままです。Nearcoの近親馬たちによる一本調子の配合です。揉まれない単調なペースを得意にすると考えます。

本馬の活力の源泉は、世界的名牝系の持つ底力、母の交配年齢(7歳時交配)、Northern DancerとNative Dancer(1950.3.27)の0化にあると考えます。ただし、本馬の母エリザベスローズは、その父ノーザンテーストが多産となって以後の産駒です。「母父ノーザンテースト」が溢れている状況下ですので、GIレースでは一抹の不安を覚えます。

本馬の最優性先祖は祖母父のCaro(14歳時交配で活性値1.50)です。形相遺伝はCaroの父フォルティノ(1959.4.19)と判断しました。でも本馬は黒鹿毛に出ていますね。サンデーサイレンスの遺伝力の強さの表れなのでしょうか……。いずれにせよ、日本に適合した血脈が強く出ていると思います。また、本馬の料的遺伝の値は5.75です。母系4世代の料の受け渡しが、いずれも若年期(8歳まで)における活性値の高い時期に行われており、本馬の遺伝的体力は保証されます。オープン馬の中でも、もちろん上級の値です。

[最後に]
「こぶし賞の勝ち馬は重賞勝ち馬になれる」と勝手に思い込んでいるのですが、フサイチゼノン、見事に重賞勝ち馬となりました。恐れ入谷の鬼子母神でした。弥生賞がサンデーサイレンス産駒のワンツーフィニッシュ(2着エアシャカール)に終わり、なんだかんだ言いながら結局サンデーサイレンスなのかと思ってしまいました。どうなんでしょう、あの強さは。いや参りました。

エリザベスローズも私が競馬を見始めた頃に走っていた馬です。懐かしいですねぇ、ケイウーマン(1990.2.13)を2着に押さえたセントウルS。あれから7年。その仔がクラシックの主役として走るのですね。私の大好きな「こぶし賞の勝ち馬」がクラシックを勝てるのかどうか。結局、応援してしまいそうなオオハシでした。


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