2000年のクラシック候補生たちを中島理論的に分析していこうという企画です。
第13回目の今回はすみれS(OP)の勝ち馬、アタラクシア号を分析してみましょう。
以下の文章中、アタラクシアは本馬と称します。4代血統構成において父は壱、母父は弐、祖母父は参、曾祖母父は四と表します。
アタラクシア 牡 鹿毛 1997.2.23生 栗東・池江泰雄厩舎 Family No.9-H
[戦績]
すみれS(OP)1着。3月4日の時点で5戦3勝、2着2回。
[血統]
父は米国産のデインヒル(1986.3.26)。主な勝ち鞍にスプリントC(GI)。通算9戦4勝。同馬はその父Danzig(1977)の『0の遺伝(8歳時交配)』を受けた名種牡馬。7代残牡先祖数は『6/64』と推定します。同馬はオセアニアで1994/1995シーズンのリーディングサイアーとなり、シャトル種牡馬の嚆矢となりました。北半球での代表産駒に愛ニ冠馬Desert King(1994)、独最強馬タイガーヒル(1995.4.11)、コロネーションS(GI)勝ち馬Kissing Cousin(1991)等。南半球での代表産駒に豪GI5勝馬デーンウイン(1995.10.2)、豪GI4勝馬Dane Ripper(1993.10.2)、豪GI4勝馬Redoute's Choice(1996.8.15)等。オセアニアで計21頭(!)のGIホースを輩出。さらに日本での代表産駒に、エプソムカップ(GIII)の勝ち馬でNHKマイルカップ(GI)2着のツクバシンフォニー(1993.1.22)、金鯱賞(GII)、シンザン記念(GIII)の勝ち馬で芝2000mの日本レコードホルダーであるゼネラリスト(1993.3.25)等。また、南半球だけで1163頭の種付けを消化(1990〜1999年)。同様に、北半球で619頭の種付けを消化(1996〜1999年)。本馬は1996年の春に日本へリースされた際に交配されて生産された産駒です。
母はランバダスタイル(1988.4.12)。同馬はその父ダンシングブレーヴ(1983.5.11)が英国で供用されていた時の初年度産駒。同馬の他の産駒にセイカサンコウ(1994.4.10)、キングフィーバー(1995.3.23)、シマノハレルヤ(1996.3.9)。本馬は母の4番仔。牝系は9号族のPocahontas(1955)系。北米の名種牡馬Chieftain(1961)、Tom Rolfe(1962.4.14)、オセアニアの名種牡馬War Hawk(1968)−その父シーホーク(1963.3.16)−は同牝馬の仔どもたちです。日本で名種牡馬となったラディガ(1969.5.18)は同牝馬の孫です。本馬の近親にビバリーヒルズH(GI)の勝ち馬Squeak(1994)。
本馬の8代残牡先祖数は『9/128』と推定します。本馬の4代血統構成を見ると、壱はデインヒル、弐はダンシングブレーヴ、参はMiddle Brother(1956)、四はSanta Claus(1961)です。壱と弐はNorthern Dancer(1961.5.27)系に属します。本馬はNorthern Dancer3×4のクロスを持ちます。しかし、壱がその父Danzigの『0の遺伝』を受けたため、このクロスは弊害無く先祖の数を減らし、種の純粋化がなされています。参はSt.Simon(1881)系。同馬はその父Hill Prince(1947)の『0の遺伝(8歳時交配)』を受けたマイナー種牡馬です。四はHurry On(1913.5.7)系。貴重な異系血脈です。
壱と弐はNorthern Dancer系の同族圏内馬。参は分枝後16代孫ですからネオ異系マジックが生じます。さらに四はMatchem系ですから異系マジックが生じます。本馬のマジックは『2』と判断します。ゆえに潜在能力指数は『4.50』と補正されます。なお、本馬の4代血統構成馬の活性値が、それぞれ0.50、1.00、1.50、1.25と別数値にあることも、知的素質の向上に役立っていると考えます。中島国治著、血とコンプレックス、P270、ミホノブルボンの解説を参照しました
本馬の活力の源泉は、Northern Dancerの0化、血統構成の良さにあると考えます。
本馬の最優性先祖は祖母父Middle Brother(14歳時交配で活性値1.50)です。形相遺伝はMiddle Brotherの母である米国産牝馬Alablue(1945、鹿毛)と判断します。アメリカンタイプの形が出ているのは良いと思います。また、本馬の料的遺伝の値は5.50(もしくは3.50)です。本馬は母ランバダスタイル(1988.4.12)の8歳時交配で生産されました。本馬の生まれた生年月日が1997年2月23日ですので、活性値の受け渡しが『2.00』で行われたものと考えます。また、母は祖母Santa's Sister(1971)の16歳時交配生産馬です。活性値の受け渡しが『2.00』で行われたか『0.00』で行われたか定かではありませんが、今回は期待感も込めて『2.00』と判断します。よって、料的遺伝の値は5.50と暫定的に判断しておきます。この値はオープン馬として上級の値にあります。
[最後に]
本馬はNorthern Dancerの『0の遺伝』を持ち、配合もMatchem系、St.Simon系を持っています。すみれSの末脚を見ると「クラシック候補」と思わせます。ただし、ひとつ懸念することは、上でも述べましたように、父デインヒルが『南半球だけで1163頭の種付けを消化(1990〜1999年)。同様に、北半球で619頭の種付けを消化(1996〜1999年)。』しているところです。あまりにも種付けし過ぎではないでしょうか。産駒が両半球に分散しているとはいえ、デインヒル自身の生体エネルギーが消耗してしまっているのではないかと思います。本馬の母に種付けを行ったのは1996年(10歳時交配、6年度)のことですから、まだ活力は残っていたやも知れません。日本での産駒数自体は少ないですし、本馬には頑張って欲しいと思います。
[追記]
ダービー3着はよく頑張ったと思います。しぶとい差し脚は広い馬場向きだったんですね。秋は京都で菊花賞。結構イケルのではないでしょうか。−2000年7月1日、追記−