中島理論で見るGIレースの勝ち馬(1995年編)

(父)(地)トロットサンダー
  • 鹿毛
  • 1989.5.10生
  • 鵡川・フラット牧場生産
  • 美浦・相川勝敏厩舎
トロットサンダーの4代血統表
ダイナコスモス
鹿毛 1983.3.25
種付け時活性値:1.25
ハンターコム
黒鹿毛 1967
Derring-Do
鹿毛 1961
Darius 1951
Sipsey Bridge 1954
Ergina
黒鹿毛 1957
Fair Trial 1932
Ballechin 1949
シャダイワーデン
栗毛 1977.4.26
ノーザンテースト
栗毛 1971.3.15
Northern Dancer 1961.5.27
Lady Victoria 1962.2.20
シャダイプリマ
鹿毛 1970.2.11
マリーノ 1956.3.6
ナイトアンドデイ 1962.3.28
ラセーヌワンダ
栃栗毛 1969.3.24
仔受胎時活性値:0.75
<地方0勝>
[母の4番仔]
テスコボーイ
黒鹿毛 1963
種付け時活性値:1.25
Princely Gift
鹿毛 1951
Nasrullah 1940.3.2
Blue Gem 1943
Suncourt
黒鹿毛 1952
Hyperion 1930.4.18
Inquisition 1936
ラ・セーヌ(青森産)
栗毛 1956.6.3
仔受胎時活性値:1.00
<地方13勝>
[母の3番仔]
リンボー
鹿毛 1949.4.23
種付け時活性値:1.50
War Admiral 1934.5.2
Boojie 1943
ラシフォード(鹿児島産)
鹿毛 1942.3.12
仔受胎時活性値:1.25
<不出走>
★アスフォード
鹿毛 1925
種付け時活性値:0.00
ラシモア
鹿毛 1934
仔受胎時活性値:1.75
トロットサンダーの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
ダイナコスモス
(Dante系)
テスコボーイ
(Princely Gift系)
リンボー
(Man o'War系)
アスフォード
(Blandford系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
1.25
(5歳時交配)
1.25
(5歳時交配)
1.50
(6歳時交配)
0.00
(16歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Nearcoの5代孫 Nearcoの3代孫 Matchem〜Man o'War系 Birdcatcherの8代孫
トロットサンダーのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 4代血統構成
(資質固定指数)
潜在能力値 少ない先祖etc
8/128 A  A  D  F(8)
(0.66)
5.28 ダイナコスモス
リンボー、アスフォード
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
リンボー
(ラセーヌワンダ)
4.75 フラストレート系
(No.1-B)
14番仔
(不受胎後)

潜在能力値は数値が少ないほど大きいことを示しています。

[Notes]

『轟く末脚』トロットサンダー。前々走毎日王冠3着、前走アイルランドトロフィー1着からのマイルチャンピオンシップ(以降、マイルCSと略)挑戦でした。マイル3戦3勝(地方時代を含めると5戦5勝)の実績が買われて4番人気。先に抜け出した2番人気ヒシアケボノが直線半ばで喘ぎかけたところを外から強襲、見事に重賞初制覇をGIで飾りました。鞍上は横山典弘騎手、所属は美浦・相川勝敏厩舎。ともにマイルCS初勝利でした。レースの2着には16番人気メイショウテゾロが入り、馬番連勝は104390円の超大穴配当となりました。「マイルCSは単勝1番人気馬で堅い」という神話が崩れ去ったレースでした。ちなみに、1番人気ビコーペガサスは4着でした。

ご存知の通り、トロットサンダーは中島氏の配合馬です。城崎哲氏が『恐るべきスピード遺伝子』という著作の中で、トロットサンダーを5代アウトクロス馬の代表として紹介され、その注釈に中島氏の配合馬であるということが示されました。

トロットサンダーの血統構成は、『Dante系×Princely Gift系×Man o'War系×Blandford系』となります。直父系の4代父であるDariusは、その父Danteの8歳時交配による『0の遺伝』を受けています。Danteの父はNearcoですが、0の遺伝の働きにより、クロスによる弊害は生じません。ゆえにDante系とPrincely Gift系というNearcoの同系配合でも、きれいに先祖の数を減らして資質の固定化に成功しています。また、祖母父リンボーがMan o'War〜Matchem系という異系のため、血の浄化をなしています。4代血統表を眺めただけだと、先祖がそれほど0化消却される配合のようには見えません。しかし、5代目以降で巧みにクロスが発生し、8代に残る牡先祖の数は『8/128』という少ないものになりました。さ、さすがは中島氏。


せっかく、中島氏の配合馬がGI馬になってくれたのですから、トロットサンダーの配合についてもう少し考えてみましょうか。中島氏ご自身による、トロットサンダーの配合に関する記述を引用します。

勝ったトロットサンダーの父ダイナコスモスは第46回皐月賞の勝ち馬で、代表産駒に小倉大賞典のワンモアラブウェイがいるが、GI勝ちは本馬が初めて。同馬はいまや希少価値となったDante系である。Danteはその仔Dariusを8歳時種付けで作ったので0の遺伝である。よって、Dante以前の先祖が存在していない状態なので、Nearcoとのインブリードに適している。(略)

配合的な特徴は、繁殖牝馬と種牡馬の世代ギャップである。トロットサンダーはラセーヌワンダが19歳、ダイナコスモスが5歳で生産されていて、その年齢差は14年もある。8代目に登場する種牡馬の平均生年代が1910年、繁殖牝馬のそれが1880年で30年の開きがある。こうした配合はクロスが発生しにくく良馬ができることが多い。たとえばアイネスフウジンがその典型で、父と母の年齢差は13年あった。

なお、種牡馬の母の父がノーザンテーストなのでNorthern Dancerが入っているが、主要サイアー・ラインではないのでその影響力は薄く、秋はマイルCSはもちろん天皇賞でも好走が期待できる。

−『競馬最強の法則』(KKベストセラーズ)、1996年9月号、P73より抜粋。−

この記事から3つのことが読み取れます。それは……、

  1. Nearco系でありながら、Dante系は「希少価値の存在」であると中島氏は認識されている。
  2. 肌馬と種馬の「世代ギャップ」。確かに、5代までにはクロスは存在しません。
  3. 「父の母の父ノーザンテースト」。Northern Dancerの血が入っているが影響小。

Nasrullah、Turn-to、Northern Dancerらの系統が主流のNearco系の中において、Danteの系統はもはや傍流といった様相です。Dante系は、主にDariusを経た系統が父系の継承役を務めています。DanteはDariusを8歳時の0交配により送り出しました。ゆえにNearcoとのクロスを作れます。そこに「傍流のマイナーさ」が上手くかみ合えば、ダイナコスモス&トロットサンダー父仔のような良馬も産み出せるのですね。

[余談]Danteは、その母Rosy Regendを通じて日本ともなじみの深い系統です。Danteの2つ年上の半兄に輸入種牡馬ハロウェー、2つ年下の全弟にSayajiraoがいます。ハロウェーから第35代日本ダービー馬タニノハローモア、オークス&有馬記念の勝ち馬スターロッチが出ました。この両馬は、ともにハロウェーから0の遺伝を受けています。一方、SayajiraoはNearcoが8歳時の0交配により生産されました。日本に輸入された直仔インディアナは、Sayajiraoが16歳時種付の0交配を受けた名種牡馬です。天皇賞馬ベルワイド、『ハイセイコーの宿敵』タケホープ、『近親交配の極み』カミノスミレ−中島氏の配合馬−などを出しました。なお、タケホープ、カミノスミレの両馬はインディアナから0の遺伝を受けています。

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