中島理論で見るGIレースの勝ち馬(1993年編)

ウイニングチケット
  • 黒鹿毛
  • 1990.3.21生
  • 静内・藤原牧場生産
  • 馬主・太田美實氏
  • 栗東・伊藤雄二厩舎
ウイニングチケットの4代血統表
トニービン
鹿毛 1983.4.7
種付け時活性値:1.50
カンパラ
黒鹿毛 1976.2.19
Kalamoun
芦毛 1970
ゼダーン 1965
Khairunissa 1960
State Pension
鹿毛 1967
オンリーフォアライフ 1960
Lorelei 1950
Severn Bridge
栗毛 1965
Hornbeam
栗毛 1953
Hyperion 1930.4.18
Thicket 1947
Priddy Fair
鹿毛 1956
Preciptic 1942
Campanette 1948
パワフルレディ
黒鹿毛 1981.5.27
仔受胎時活性値:2.00
マルゼンスキー
鹿毛 1974.5.19
種付け時活性値:1.50
Nijinsky
鹿毛 1967.2.21
Northern Dancer 1961.5.27
Flaming Page 1959.4.24
シル
鹿毛 1970.4.22
Buckpasser 1963.4.28
Quill 1956
ロッチテスコ
鹿毛 1975.2.16
仔受胎時活性値:1.25
テスコボーイ
黒鹿毛 1963
種付け時活性値:0.75
Princely Gift 1951
Suncourt 1952
スターロッチ
鹿毛 1957.4.16
仔受胎時活性値:0.25
★ハロウェー
黒鹿毛 1940
種付け時活性値:0.00
コロナ
栗毛 1943.4.20
仔受胎時活性値:1.25
ウイニングチケットの4代血統構成&4代父系の活性値&4代父系の分枝状況
母父 祖母父 曾祖母父
トニービン
(ゼダーン系)
マルゼンスキー
(Northern Dancer系)
テスコボーイ
(Princely Gift系)
ハロウェー
(Fairway系)
父の活性値 母父の活性値 祖母父の活性値 曾祖母父の活性値
1.50
(6歳時交配)
1.50
(6歳時交配)
0.75
(11歳時交配)
0.00
(16歳時交配)
父の分枝状況 母父の分枝状況 祖母父の分枝状況 曾祖母父の分枝状況
Nasrullahの5代孫 Nearcoの4代孫 Nasrullahの孫 Phalarisの孫
ウイニングチケットのB&B理論的総括
8代残牡先祖数 4代血統構成
(資質固定指数)
潜在能力値 少ない先祖etc
15/128 A  A  A  A
(1.00)
15.00 父初年度産駒
ハロウェー
形相の遺伝 料の遺伝 牝系 何番仔?
トニービン 4.75 近親活躍馬多数
(No.11-C)
6番仔
(6連産目)

潜在能力値は数値が少ないほど大きいことを示しています。

[Notes]

『青春野郎』ウイニングチケット。柴田政人騎手の悲願を達成させ、伊藤雄二調教師の大願を成就させた馬。前年のミホノブルボンに続き、日本の名牝系クレイグダーロッチ系から2年連続でダービー馬が送り出されました。勝ち時計2分25秒5は日本ダービー史上2位の好タイム。レースの2着には柴田騎手と同期の岡部幸雄騎手騎乗のビワハヤヒデ、3着には武豊騎手騎乗の皐月賞馬ナリタタイシン

中島理論的な解釈を行うと、4代血統構成は『Grey Sovereign系×Northern Dancer系×Princely Gift系×Fairway系』となり、Phalaris系の近しい所ばかりの配合となっています。一本調子の配合で、ややもすると成長力に疑問が残る配合ではあります−栄光のダービー馬に対して失礼ですが−

ウイニングチケットの父であるトニービンは、3〜5歳時27戦15勝。凱旋門賞、ミラノ大賞(2回)、ジョッキークラブ大賞、共和国大統領賞(2回)などGI6勝を挙げた名馬です。しかし、輸入当初はそれほど期待されていなかったのでしょうか、初年度の種付頭数は57頭と少ないものでした。良く言えば「スリムで細身の馬体」、悪く言えば「貧相に見える馬体」がちょっと嫌われたようです。ところが、初年度産駒が走り始めるやいなや、このウイニングチケットのダービー&ベガの牝馬ニ冠と合わせて春のクラシック3勝という素晴らしさ。掌を返すように大人気種牡馬となりました。さて、トニービンはGI6勝のうち仏国で1勝、伊国で5勝を挙げています。バリバリの欧州血統馬であるトニービンですが、自身はちょっと非力な競走馬だったらしく、比較的馬場の軽い伊国が活躍の主戦場でした。

イタリア、ドイツの競馬場は右廻りのトラック・コースで日本の芝馬場にもっとも似ている。

−中島国治著、『血とコンプレックス』(KKベストセラーズ)、P274より抜粋。−

愛国産馬ながら伊国の芝馬場で活躍したトニービン。もしかしたら、「伊国で活躍」というのが種牡馬として成功した下地になったのかもしれませんね。かつての日本の名種牡馬セダン、ルイスデール、ゲイルーザックなどは伊ダービー馬たちです。

ウイニングチケットの牝系は、日本の名牝系のひとつクレイグダーロッチ系のコロナ分枝、スターロッチ系です。母パワフルレディは不出走。3番仔に4勝を挙げ北九州記念で2着したマルブツパワフルを輩出し、6番仔としてウイニングチケットを送り出しました−その後、9番仔として皐月賞&菊花賞2着馬ロイヤルタッチを輩出しました−。また、初仔エイプリルブライドの仔に、1995&1996年NARサラ系4歳以上最優秀馬マルブツセカイオーが出ています。祖母ロッチテスコは2勝。2番仔としてパワフルレディを輩出し、5番仔にクリスタルカップ3着のサクラジェイド、6番仔に阪神3歳S3着のジンデンボーイ、9番仔にクリスタルカップの勝ち馬カリスタグローリを輩出しました。曾祖母スターロッチは9勝馬。オークス、有馬記念、京王杯オータムハンデなどを勝ちました。3歳時にオークス、有馬記念と勝利した馬は、現在のところスターロッチただ1頭です。また、スターロッチはその父ハロウェーの16歳時交配による0遺伝馬です。スターロッチは、直仔に主だった産駒は残せませんでしたが、孫、曾孫の代になって活躍馬が続出しました。初仔モンタロッチの孫に重賞4勝馬マチカネタンホイザ、2番仔スターハイネスの孫に名スプリンターサクラシンゲキ&天皇賞・秋馬サクラユタカオー兄弟、曾孫に皐月賞&菊花賞を勝ったサクラスターオー、6番仔ロッチの初仔に皐月賞馬ハードバージ−伊藤雄二厩舎初のクラシックホース−、8番仔ネバーロッチの孫に『京都の鬼』オースミロッチが輩出されました。スゴイ。

ハードバージが皐月賞を勝ち、日本ダービーを2着となったのが1977年。それから16年の月日をかけて、おなじスターロッチの牝系からダービー馬を送り出した伊藤雄二調教師。そして、伊藤師の「マサトをダービージョッキーにしてやりたい」という思いを実現化した柴田政人騎手。プロが持つ「本当の凄さ」を見せつけた1993年の日本ダービーでした。

[余談]
伊藤雄二調教師はクレイグダーロッチ系がお気に入りのようで、上で挙げたウイニングチケットやハードバージ、マチカネタンホイザ以外にもニホンピロマーチ、コニーストン&メイショウヤエガキ母仔、ワコーチカコ、マックスロゼ&マックスキャンドゥ姉妹なども皆クレイグダーロッチ系に属する管理馬たちです。もっとも、これは伊藤師が若かりし頃からお世話になっていたという藤原牧場さん、野島牧場さん、稲原牧場さんなどとのつながりによるものも大きいとも思います(裏を返せば、この3牧場がクレイグダーロッチ系を大事に大事に育くんできたということの証左でもあります)。マックスロゼやマックスキャンドゥは、スイーブの系統やファイトガリバーでおなじみの天羽牧場さんですね。

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