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以下に中島氏の診断を転載、引用しておきます。
ティッカネン(1991)
●産駒数 42頭(牡22頭、牝20頭)
●有数値先祖数 11/64
●競走歴 仏愛独伊米英で出走し、17戦4勝。BCターフ(GI12F)、ターフクラシック(GI12F)、グレフュール賞(GII2100メートル)の勝ち馬。
●血統 父コジーン(Cozzene 1980)、母レイコ(Reiko 1979)。コジーンは父カロ(Caro 1967 フォルティノ系)。コジーンは、BCマイル(GI)など10勝。同馬の産駒に、エイシンバーリン(クイーンCGIII)、エイシンコンカードが日本で成功。スターオブコジーン(アーリントンミリオンGI、マンノウォーSGI、輸入種牡馬)らを輩出。
母レイコは故和田共弘氏の生産である。私と同氏とは昭和41年から親交があり、ドルメロの秘法0遺伝、マイナー種牡馬の闘争本能、異系種牡馬の重要性などを話し合った仲であった。本馬がBCを勝ったときに「和田さんおめでとう」と心の中でさけび泣きながら喜んだ。同牝馬はターゴワイスの0交配、リベロの0交配(ともにセントサイモン系)。近親にメジロパーマー(有馬記念GI、宝塚記念GI)がいる。同馬はトゥルシュオン(愛セントレジャーGI)を輩出している。レイコの7代目の有数値先祖数は4/64で、GI勝ち馬を輩出可能の数値である。
牝系はFamily No.1のラトルワンヌ系である。和田氏がもっとも好きな牝系でメジロアサマの母スヰートも同系である。
〔評価〕本馬の血にはネイティヴダンサーやノーザンダンサーの血をもたず配合しやすい種牡馬であり、産駒の42頭も理想に近い。産駒は期待できる。期待度A。
−『競馬最強の法則』誌、1999年9月号、P26〜P27より抜粋。−
それでは、中島氏の診断に基づいて、7代目に残る牡先祖について考えてみましょう。ティッカネンの7代目に残る牡先祖は、以下の11頭となりました。
父方に9頭、母方に2頭の有数値牡先祖が残っています。
処理の簡単な母方の2頭の先祖から行ってみましょう。 ティッカネンの3代母(曾祖母)はノーラックです。ということは名種牡馬モガミ(1976.5.18)と同牝系ということになります。つまり、モガミを血統内に持つ牝馬とクロスした場合に、ノーラックの『牝馬クロス』が生じる為にSun Teddy、Pharamondは0化されます。日本の多くの牝馬にモガミの血が潜入していることもあり、この牝馬のクロスは容易に生じるでしょう。
次に父方の9頭の先祖についてです。 9頭の先祖のうち5頭が直系祖父Caroの血統構成内に在ります。日本にはCaroの父フォルティノの血を持つ牝馬がそれなりにいるはずから、有数値のクロスでも2代のブルー0−フォルティノの祖父Nasrullah(1940.3.2)が0化している−によりTetratemaを除く4頭は0化できると思います。また、同父系のシービークロス(1975.5.5)の0遺伝馬タマモクロス(1984.5.23)の血が繁殖牝馬の中に潜入を始めているため、フォルティノの血を0化することも可能ですね。
同様にGrey Sovereignの0遺伝馬ゼダーン(1965)、あるいはその子孫であるカンパラ(1976.2.19)、トニービン(1983.4.7)といったところの血も繁殖牝馬の中に潜入しているため、Grey Sovereignの0化は割と容易に出来得ると思います。
残る4頭の先祖。まずはPrince John内に在るBlack Servant、Over Thereについてです。 アメリカ血統色が強い馬には、Black Toney(1911)の血が必ずといってよいほど血統構成内に潜入しています。アメリカンダミーゆえにリフレッシュされた血が必然的にたくさんの馬に潜入していったのでしょうか。Black Servantの直仔であるBlue Larkspur(1926)は、Nijinsky(1967.2.21)や、Buckpasser(1963)、Hail to Reason(1958)らの働きにより世界の多くの馬の血統に潜入しています。日本も例外ではありませんね。ゆえにBlack Servantの血は0化しやすいといえるでしょう。Over ThereはSpearmint(1903)の直仔。割と珍しい血です。ティッカネンの7代残牡先祖の中で一番0化しにくい先祖かもしれません。
残る2頭、CarusoとSir Gallahad。 CarusoはSir Gaylordの母Something Royal(1952)の母父です。Sir GaylordといえばSecretariat(1970.3.30)、ファーストファミリー(1962.2.24)というところの兄弟としてお馴染みです。Something Royalの血は少なからず繁殖牝馬に潜入しているといえるでしょう。つまり、『牝馬クロス』が起こり得るということですね。Sir GallahadはTeddy(1913)の直仔。Black Toney系と同じように、Teddyの血はアメリカ血統色の強い馬には必ずといって良いほど潜入しています。特にSir Gallahad、Bull Dog(1927)の全兄弟の血は多数の繁殖牝馬の内に存在しています(実際、ティッカネンの母父ターゴワイス(1970)内にBull Dogが在りますし)。両馬の7代残牡先祖数は『5/64』。多数の繁殖牝馬に潜入するのも通りのことなのでしょうか。もちろん、0化することは容易です。
改めてティッカネンの7代残牡先祖を見直してみると、『期待度A』は贔屓目があるにせよ、『期待度B』くらいならおかしくないような気がします。何故ならば、今まで見てきたように『比較的消去しやすい(と思われる)先祖』が有数値牡先祖として残っているからです。繁殖牝馬との兼ね合いで仔出しが左右されるのは確かに弱点なのですが。
残先祖数の多少を比較するのも当然です。けれど、もうひとつ突っ込んだ見方をするならば、『残有数値牡先祖の検討』をするべきなのでしょう。有数値で残る牡先祖でも多くの繁殖牝馬に潜入している先祖ならば0化は可能ですものね。
最後にティッカネンについてのまとめを。Bold Ruler(1954)、Nasrullah、Round Table(1954)、Ribot(1952.2.27)、Count Fleet(1940.3.24)、Black Toney、Son-in-Law(1911)等の0化が可能という強みがあります。母系がアメリカ血統色の強い種牡馬です。繁殖牝馬にもアメリカ血統の馬を持ってくることがベターでしょう。また『Northern Dancer(1961.5.27)&Native Dancer(1950.3.27) Free』の種牡馬ですので、中島氏のおっしゃるように配合しやすい種牡馬といえます。
繁殖牝馬の血統構成に、モガミ、ゼダーン、フォルティノ、Riverman(1969)系の種牡馬、或いはアメリカ血統色の強い馬を持っていれば良馬が輩出されるのではないでしょうか(クロスさせる場合)。
また、5代残牡先祖数が『4/16』と少なく、活力ある産駒が輩出できると思います(ブルー0を含む)。
産駒数は初年度41(42?)頭、2年目52頭です。種付け頭数は初年度53頭、2年目67頭、3年目79頭です。同父系馬たちの活躍もあって、1999年の種付け頭数は100頭を超えたそうです(たまたまだと思いますが『0の遺伝』の年廻りにたくさんの交配頭数となりました)。
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