レディミューズ  [ Home >> B&B >> 2000年クラシック牝馬編 ]

2000年のクラシック候補生たちを中島理論的に分析していこうという企画です。
第16回目の今回はチューリップ賞(GIII)の2着馬、レディミューズ号を分析してみましょう。

以下の文章中、レディミューズは本馬と称します。4代血統構成において父は壱、母父は弐、祖母父は参、曾祖母父は四と表します。


レディミューズ   牝   栗毛   1997.4.24生   美浦・藤沢和雄厩舎   Family No.4-D

[戦績]
チューリップ賞(GIII)2着。3月8日の時点で3戦2勝、2着1回。

[血統]
父は米国産のティンバーカントリー(1992.4.14)。現役時代の成績は12戦5勝、2着1回、3着4回。主な勝ち鞍にプリークネスS(米GI)、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル(米GI)、シャンペンS(米GI)等。ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルを制した後、翌年の米国牡馬三冠戦線において、いずれかのレース−ケンタッキー・ダービー、プリークネスS、ベルモントS(いずれもGI)−に勝利した馬は、現在のところ同馬だけのようです。同馬は、その父Woodman(1983.2.17)の8歳時交配による『0の遺伝』を受けた名馬です。7代に残る有数値牡先祖数は『3/64』と少なく、名種牡馬になり得る数値です。中島氏は『競馬最強の法則』誌、1999年9月号、P27の新種牡馬ティンバーカントリーの分析の項において、産駒の期待度を「A」とされていました(A〜Eまで5段階評価。Aが最上位)。同馬の母であるFall Aspen(1976)は、マトロンS(米GI)等通算20戦8勝。同牝馬は、自身の成績もさることながら繁殖成績が目覚しく、ティンバーカントリーの他にゲイムリーH(米GI)の勝ち馬Northern Aspen(1982)、ジュライC(英GI)の勝ち馬Hamas(1985)、パリ大賞(仏GI)の勝ち馬Fort Wood(1990)、アスタルテ賞(仏GII)の勝ち馬El Seule(1983)、ポモーヌ賞(仏GII)の勝ち馬Colorado Dancer(1986)−同馬は、2000年のドバイワールドカップ(UAEGI)の勝ち馬Dubai Millennum(1996)の母−、ダイアデムS(英GII)の勝ち馬Bianconi(1995)、グッドウッドC(英GIII)の勝ち馬Mazzacano(1985)等重賞勝ち馬8頭(!)を直仔に送り出しました。孫、曾孫世代からもGI勝ち馬が出ています。同牝馬は1994年の米国年度代表繁殖牝馬です。父の血統についての解説が長くなりましたが、本馬は父の初年度産駒となります。

母は愛国産のシンコウラブリイ(1989.2.2)。同馬は外国産馬として日本で出走し、現役時代の成績は15戦10勝、2着2回、3着2回。主な勝ち鞍にマイルCS(GI)、NZT4歳S(GII)、毎日王冠(GII)、スワンS(GII)、ラジオたんぱ賞(GIII)、クイーンS(GIII)等(重賞6勝)。1993年のJRA最優秀4歳以上牝馬。同馬は父Caerleon(1980.3.27)の8歳時交配による『0の遺伝』を受けた名馬です。本馬は母の3番仔となり、母の7歳時交配で生産されました。母の他の産駒にロードクロノス(1995.3.27)、レディベローナ(1996.4.18)。牝系はAzurine(1957)系。本馬の近親に、アルゼンチン共和国杯(GII)の勝ち馬タイキエルドラド(1994.3.30)、エプソムカップ(GIII)の勝ち馬タイキマーシャル(1992.3.21)、札幌記念3着馬セサロニアン(1988)等。同牝系からはGI5勝馬タイキシャトル(1994.3.23)、英オークス(GI)と愛オークス(GI)を制したブルーウィンド(1978)等も輩出されています。近年の日本競馬の流れによく合致した牝系のひとつと言えます。

本馬の8代残牡先祖数は『11/128』と推定します(7代残牡先祖数は『6/64』と推定します)。4代血統構成を見ると、壱はティンバーカントリー、弐はCaerleon、参はポッセ(1977)、四はHigh Top(1969)です。壱、弐、四はPhalaris(1913)系の種牡馬。特に弐と四はNearco(1935.1.24)系。壱と四は先祖馬が、弐は自身が『0の遺伝』を与えているため、本馬のPhalaris、Nearcoクロスは弊害なく先祖の数を減らしています。弐はNijinsky(1967.2.21)の直仔。現役時代は仏ダービー(仏GI)、ヘンソン&ヘッジス・ゴールドカップ(英GI)等、通算8戦4勝。代表産駒にジェネラス(1988.2.8)、フサイチコンコルド(1993.2.11)、エルウェーウイン(1990.2.24)、ビワハイジ(1993.3.7)等。他に欧米でGI勝ち馬を多数輩出。同馬は前出のタイキシャトルの弐でもあります。なお、弐が『0の遺伝』を与えているため、本馬の持つNorthern Dancer(1961.5.27)とNative Dancer(1950.3.27)は0化され、不存の先祖となります。参はHyperion(1930.4.18)系の種牡馬。現役時代の主な勝ち鞍にサセックスS(英GI、8F)があり、通算6戦2勝。同馬は、1986年に英国より種牡馬として輸入されるも、事故のため日本で産駒を残せず。英国で輩出した産駒に輸入種牡馬シェリフズスター(1985)。四はいまや希少価値的存在となったDante(1942)系の種牡馬。同馬の父系子孫に輸入種牡馬サンテステフ(1982)。

余談となりますが、本馬の8代までに残る非0化牡先祖の総数は『34/255(推定)』と少なく、また父ティンバーカントリーの7代までに残る非0化牡先祖の総数は『10/127(推定)』と少ないです。

4代血統構成馬の父系分枝状況に目を向けると、
壱  Phalarisの8代孫
弐  Nearcoの4代孫
参  Whalebone(1807)の12代孫
四  Nearcoの4代孫

壱と弐と四はPhalaris系の近親で同属圏内馬。参が分枝以後12代以上経ていますので、ネオ異系マジックが生じます。本馬のマジックは『1』となります。ゆえに本馬の潜在能力指数は『8.25』と補正されます。なお、本馬の4代血統構成馬の活性値が、それぞれ1.00、0.00、1.50、1.25と別数値にあることも、知的素質の向上に役立っていると考えます。中島国治著、血とコンプレックス、P270、ミホノブルボンの解説を参照しました

本馬の活力の源泉は、牝系の持つ勢い、母の交配年齢(7歳時交配)、血統構成の良さ(Northern DancerとNative Dancerの0化&ネオ異系マジック&4代血統構成馬の活性値の違い)にあると考えます。

本馬の最優性先祖は祖母父のポッセ(6歳時交配で活性値1.50、栗毛)です。形相遺伝は祖母のハッピートレイルズ(1984)と判断します。ポッセは、上記した通り8Fで行われるGI戦、サセックスSの勝ち馬です。母シンコウラブリイも「ベスト・マイラー」でした。ゆえに本馬の距離適性は1600mあたりと考えます(牝馬どうしならば2400mもこなせそうです)。また、本馬の料的遺伝の値は5.75(あるいは3.75)です。本馬の祖母ハッピートレイルズ(1984)は、曾祖母ロイコン(1975)の8歳時交配の産駒です。活性値の受け渡しが『0.00』で行われたか『2.00』で行われたかは定かではありません。しかし、中島国治著、『血とコンプレックス』、P233によりますと、この活性値の受け渡しは『2.00』のようです。よって、本馬の料的遺伝の値は5.75と推定します。4世代の活性値の受け渡しが、いずれも母馬が8歳になるまでの若年期に行われており、本馬の遺伝的体力は保証されます。もちろんオープンでも上級の値です。ちなみに、本馬の母(シンコウラブリイ)は祖母の初仔、曾祖母も4代母(Madelon)の初仔となっております。

[最後に]
シンコウラブリイといえば、近年の最強牝馬の1頭だと私は思っています。特に1993年の毎日王冠のレコード勝ちは、その前年にダイタクヘリオス(1987.4.10)が打ちたてたばかりのレコードを、あっさりと塗り替える強い内容でした。夕映えの中に映し出された電光掲示板の1分45秒5の表示が、いまも強烈に印象を残しています。雨中の決戦となった引退レース、マイルCSも圧勝といえる内容でした。

シンコウラブリイの初仔であるロードクロノスも5勝を挙げ活躍していますが、重賞戦線に顔を出した産駒は本馬、レディミューズが初めてです。鞍上は、母と同じく岡部幸雄騎手。なぜか桜花賞未勝利の岡部騎手に、「ミューズ」の名の通り、桜の「女神」を振り向かせることができるでしょうか。また、中島理論使いとしても、父ティンバーカントリーの初年度の代表産駒として頑張って欲しいと思います。

[追記]
オークスはあわやの4着でした。後ろにいたオリーブクラウンに突つかれなければ、もっと際どい結果になっていたのではないでしょうか。秋も中島理論使いとして応援します。−2000年7月1日、追記−


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